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ミステリー映画「トランスワールド」 タイムリープとループと家族愛を贅沢に合わせた良作

 

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こんにちは、管理人のかずです。
クリントイーストウッドの息子「スコットイーストウッド」主演のミステリー映画
「トランスワールド」を観ましたので、感想を書きたいと思います。

 

 

トレイラー


「トランス・ワールド」予告

作品情報

タイトル(原題) トランスワールド(enter nowhere)
公開年 2011
上映時間 90分
製作国 アメリ
監督 ジャック・ヘラー
脚本 ショーン・クリステンセン
ジェイソン・ドラン
ジャンル SFミステリー
主要キャスト サラ・パクストン
スコット・イーストウッド
キャサリン・ウォーターストーン
ショーン・サイポス
配信サイト プライムビデオ(記事執筆時点)

 

あらすじ

森の中に迷い込んだ3人の見知らぬ男女を待ち受ける奇妙な運命を描いたサスペンスミステリー。
とある森の奥深く。夫とドライブ中にガス欠に陥り、ガソリンを買いに行ったまま戻ってこない夫を探していたサマンサは、1軒のキャビンにたどり着く。
するとそこに、同じように車のトラブルに見舞われた青年トムが出現。
さらに、今度はジョディという女がやって来る。
ジョディは恋人と強盗をしてきたばかりで、なぜキャビンにたどり着いたのかわからないという。
3人は助けを求めに森を出ようとするが、いつの間にか同じキャビンに戻ってきてしまう。
さらに、3人がやって来たのはそれぞれ別の場所や時代であることが判明する。
出演は「シャーク・ナイト」のサラ・パクストン、「フューリー」のスコット・イーストウッド、「インヒアレント・ヴァイス」のキャサリン・ウォーターストーン。

引用:トランス・ワールド : 作品情報 - 映画.com

見どころ

  • ループする空間内での脱出劇
  • 一見何の関連性もない3人の意外な関係
  • クリントイーストウッドの息子、スコットイーストウッドの演技
  • 運命にあがなう3人の奮闘劇
  • 伏線がきっちり回収され、終わり方もすっきり

俳優

スコット・イーストウッド(トム)

森で車が故障してしまい、小屋に避難していた男性。聡明で頼り甲斐のある雰囲気を醸し出しており、会ってすぐのサマンサともすぐに信頼関係を築けます。
父親のクリントイーストウッドにちょっとずつ似てきましたね。

キャサリン・ウォーターストン(サマンサ)

車がガス欠になり、ガソリンを取りに行った夫が帰ってこず、さまようようにして小屋に辿り着いた女性。乗っている車、出で立ちがレトロ感を醸し出しています。
最近の映画では、「ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生」に出演しています。

小顔で182cmの長身とかなり恵まれた体型。

サラ・パクストン(ジョディ)

冒頭でコンビニ強盗をする、見た目通りの悪女。初対面でも失礼な態度を取り続け、二人を苛立たせます。グレた理由は物語が進むと判明してきます。実は根は優しい系。
本人は女優でもあり、歌手でもあるそうです。

感想「ネタバレなし」

ジャンルはソリッドシチュエーションスリラーになるのでしょうか。
不可思議な事態に遭遇した主人公達が、どのようにして、この事態を乗り切るか?
ストーリー展開と共に、少しづつ謎が解明されていきます。
登場人物はたったの4人(厳密には6人)。舞台も森のみ。
それでも最後まで見られるのは、テンポがいいからなんでしょうね。
いい頃合いで、「お?」と思わせる展開が待っています。
難しい設定や言葉も出てこないので気軽に観られる良作です。

感想「ネタバレあり」

世にも奇妙な物語」系の不条理でちょっと怖いお話

舞台となる森はループしています。
ゲーム「パックマン」をイメージしてもらえれば分かりやすいでしょうか。
ずーっと同じ方向に進んだつもりが、気づけば元の場所に戻ってしまう。
現実ではあり得ない現象が起こる森。
とは言え、特に怪物が出てくるわけでも殺人鬼がうろついてるわけでもないため、それ系が苦手な人でも問題なく楽しめる作品です。グロシーンはほぼゼロです。

ちょっと違うかもしれませんが、「CUBE」のような世界観が好きな人は気にいるのではないかなと。迷う前の描写や、森以外の舞台はほぼ皆無。
劇中も「なんでこの3人はループする森に迷い込んだのか?」
そんなことが気になって、ついついストーリーを追ってしまいます。

ちなみに余談ですが、ループもの映画のオススメとして「パラドクス」の記事もあげています。もし興味がある方は下記よりご覧ください。

 

cinemabookgame.hatenablog.com 

タイムリープものが好きな人にオススメ!

 劇中の3人は、生まれた年が全く違います。

サマンサは60年代、ジョディは80年代、そしてトムは2010年代。
それだけでも驚きですが、この3人はなんと血縁関係にあります。
サマンサはジョディの母親で、ジョディはトムの母親です。

勘のいい方なら、物語前半で気付きそうですが、僕は明かされるまで全くわかりませんでした(笑)。
明かされた時は思わず「まじか」となりました。


どこからどう見ても子どもを作りそうにない(出来ちゃった婚はしそうだけど)ジョディが、トムの母親であるという事実にトムは勿論のこと、僕が一番戸惑いました。


トムが「俺の母親はすぐに死刑になった」と漏らしているシーンがありました。
この映画、物語前半で、この3人の関係をほのめかすシーンがちらほらあります。
トムの祖母に当たるサマンサがレトロな車に乗っているなど。
後から種明かしをされて「はー、そういうことか」となりました。


そして時空を超える系は、大抵「起こりうる最悪の未来」を変えるために主人公達が奮闘します。

未来では3人が死ぬ運命にあった

劇中、3人は夢を見ます。そしてその夢は自分が死ぬ夢でした。
サマンサは死産、ジョディは強盗殺人の容疑で死刑、トムは自分を虐待した神父を殺して自分も自殺。
そしてそれは未来で確実に起こる出来事でした。
そんな中、突如としてドイツ語を喋る兵士が現れます。
彼は何かを警戒している様子でこちらに銃を向けて詰め寄り、3人を拘束します。

実はここは1930年代で、第2次世界大戦の真っ只中。
彼はアメリカ兵と戦うドイツ兵、ハンス・ノイマンでした。

サマンサとジョディが身につけていたロケットを見て驚くハンス。
何故なら、そのロケットと全く同じものを自分も身につけていたからでした(ロケットの中身はハンスの妻の写真)。

二人は程なくして、ハンスがサマンサの父親(そしてジョディの祖父)であることを理解します。
ハンスは戦死し、サマンサの母親はアメリカ人と再婚。
そのアメリカ人は飲んだくれでロクでもない男でした。
母親もサマンサを生んで事故死。
サマンサは後に結婚しますが、夫はベトナムで戦死します。
身籠っていたサマンサは自宅で急に陣痛が始まり、誰も側にいてくれる人がおらず、死産してしまいます。
ジョディは生まれた時から両親がおらず、飲んだくれの祖父から酷い扱いを受けてグレて強盗を働くようになります。

3人は自分たちの死は全てハンスの死が関係していると確信します。

ハンスを戦死させるわけにはいかない。
だからこの地に集められたのだと。

時空を超える家族愛

それぞれの悲しい未来を変えるため、過去を変えることを決意する3人。
それはどこか自分のためではなく、それぞれの親のために奮闘しているようにも見えました。
家族一丸となって運命を切り開こうとする3人。
ただ一人、状況がイマイチ飲み込めていないハンス。
3人は何とかハンスを説得して防空壕への避難を勧めるも、一向に聞く耳を持ちません。
そんなこんなでもみ合いになり、ハンスはジョディを撃ち殺してしまいます。
そして程なくして消えてしまうトム。

ここまで来てバッドエンドなのか!?

そう思うのも束の間、サマンサが鬼気迫る表情で、ハンス(父親)に詰め寄ります。
流石のハンスも従わざるを得ず、二人で防空壕に逃げ込みます。

空爆が始まり、防空壕内がめちゃくちゃになるところでブラックアウト。

もしかして結局「どんなに頑張っても未来は変えられないよね」系のバッドエンドなのか。
そう思っていたのも束の間、舞台は冒頭のコンビニに移ります。
そこにいるジョディはオープニングのやさぐれた彼女ではなく、身なりをきちんと整えた優しそうな女性でした。

未来はちゃんと変えられていたのでした。

めでたしめでたし…

あれ、トムは??

そうなんです。この最後のシーン、トムの描写がないんですよね。
恐らくジョディの父親が変わってしまい、生まれてくるはずのトムがいなくなっちゃったんですよね。

トムゥゥゥゥ…!

祖母と母親の運命を変えるために奮闘した息子トム。
手放しにハッピーエンドとは言えません。自己犠牲。
美しくも儚い自己犠牲に、ちょっと胸を打たれました。
日本人、自己犠牲大好きですもんね。

コンビニの金庫の中身は結局何?

登場するシーンが少ないにも関わらず、何故か印象に残るコンビニの店主。
強盗に入るジョディに「そんな人生を送っているのか」や、金庫の中身を要求する彼女に「お気に召さんよ」と、意味深な発言をしています。

恐らくですが、金庫の中身は、タイムリープの道具なのではないかなと。
それか開けてしまった時点で、その世界に取り込まれてしまうのか。

ひょっとしたら店主は悲しい過去と未来を背負った若者を助けるために現れた神様の使いなのかもしれませんね…なんて言ったらちょっとメルヘンに過ぎるでしょうか。

まとめ

総評として、非常に楽しめる作品でした。SFチックなタイムリープものに、やや陳腐な家族愛が乗っかり、ややもすれば安っぽい映画になりかねませんが、そこを役者の演技とテンポの良いストーリー展開でカバーした感じです。
伏線もきっちり回収し、終わり方も僅かな余韻を残しつつスッキリ。

個人的に5点満点中の3.5あたりの評価です。

filmarksでも感想を載せていますので、ぜひご覧ください。

filmarks.com

ここまで読んでいただきありがとうございました。