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小説「星を継ぐもの」 感想

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今回は僕が非常に感銘を受けたSF小説を紹介したいと思います。SF小説なんて全くもって読んだことのない僕が、初めて挑戦したSF小説。その名も…

「星を継ぐもの」

難解な専門用語が並ぶ中、導入部分で幾度となく集中力を切らしながら読み進めた先にある、衝撃の展開の数々と、キャラクターの一挙手一投足までもが想像できる、巧みな文章力。正直、小説でここまで衝撃を受けたのは初めてです。

 

今回はできる限りネタバレ無しで感想を述べたいと思います。

 

難解な用語が並ぶが決して理解不能ではない


冒頭で、難解な専門用語が多い事に言及しましたが、正直それらの言葉の意味を正確に知らずとも読み進められるようにできています。著者は物理学、生物学、そして機械工学などにかなり精通しておられる方らしく、そういった知識を基礎として、物語は展開されます。ややもすれば、難解な文章の数々に、集中力を根こそぎ奪われかねません。しかしそこは、翻訳者の力でもあるのか、何とも絶妙な難易度の言い回しで表現されており、一見難解な文章が苦もなく頭に入ってきます。自分の頭が良くなった錯覚すら覚えます。

荒唐無稽ではあるが決してありえなくはない


物語は、5万年前に月で死んだとされる宇宙服をまとった死体を中心に展開されます。数々の憶測と科学的推論によって、徐々にこの死体の正体が明らかにされますが、それでも次から次へと新たな疑問が浮上していきます。

果たしてこの死体はどこから来たのか?

数々の科学的根拠を元に、次から次へと謎が解明されます。思わず納得してしまう説得力を持って、次から次へと湧き上がる謎を解き明かしていく過程は、爽快感すら覚えます。

そして物語が進むにつれ、おおよそ想像を絶するような衝撃の事実が次々に明らかになっていきます。この新たな”衝撃”の事実が判明する瞬間は、読んでいて背筋が震えるほどでした。そして何よりも凄いのが、それら衝撃の事実は一見、荒唐無稽ではあるが、ひょっとしたら現実にありえるかも?と思わせてしまうことです。著者の豊富な知識と科学的根拠に基づいたストーリーの賜物だと思います。

頭の中で星間移動さえできる贅沢


巧みな言い回しと表現力で、読む者の想像力を否応無しに掻き立てる本著。物語中に、登場人物が有人探査機で星間移動をする描写があるが、まさに読んでいる最中は、登場人物と一緒に星間移動をしているような、そんな感覚に陥ります。未開の惑星に降り立ったシーンでは、荒涼とした絶望的な風景が、頭の中にリアルに思い描けるほどでした。また、何気ない所作においても、キャラクターの動作がありありと想像できます。生き生きと動く頭の中の登場人物。VRなどなくても、人は想像力によってどこにも行けるし、どんな情景を思い描くことも可能なのです。まさにSF小説の醍醐味だ。

締めくくりも綺麗


全ての謎が解明された時の感覚は今でも忘れられません。語彙力に乏しい言い回しをさせてもらうなら一言「まじか」という単語しか頭に出てこない。それくらい打ちのめされたのを覚えています。そして、想像を遥かに超える展開を見せつつも、その結末は我々人類に勇気を与えてくれる類のものです。どう着地するのか見えてこないストーリー。その結末は是非、その目で確かめてもらいたいです。

SF小説にハマるきっかけを与えてくれた本作。自分の住む世界とは違うどこかに気軽にワープできるこの”装置”は、最高に贅沢な人類の発明品なんじゃないか、と大げさではあるがそんな事すら思いました。この記事を機に、「星を継ぐもの」に興味を持って読んでいただければ幸いです。いや、ほんと面白いですから。